Q 保護者から児童・生徒が「いじめを受けた」という訴えがあった場合,学校はどこまでの対応をする必要があるのでしょうか?

 

例えば,ある生徒がクラスメイトからいじめを受けているとの相談が保護者からなされたとき,学校はどこまでの対応をすべきなのでしょうか。保護者から「調査・報告をせよ。」と言われた経験のある先生方は少なくないのではないでしょうか。
 

「いじめ防止対策推進法」には,「重大事態」が発生したときは,地方公共団体の長(私立学校の場合は,所轄する都道府県知事)に報告しなければならないと規定されています。
 

「重大事態」とは,いじめを原因として,児童・生徒の生命,心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあるとき,及びいじめを原因として児童・生徒が相当期間学校を欠席している疑いがあるときです。

 
 

裁判例上も学校に調査・報告義務は認められています。

さいたま地裁平成20年7月18日判決は生徒が自殺した事件について「学校は,在学契約に基づく付随的義務として,信義則上,親権者等に対し,生徒の自殺が学校生活に起因するのかどうかを解明可能な程度に適時に事実関係の調査をし,それを報告する義務を負うというべきである。」として,調査報告義務を認めています。ただし,一方では「学校は,捜査機関ではなく教育機関であり,人的物的体制にかんがみてもその調査報告には自ずから限界がある」として,一定の限界があることを認めています。

そして,東京地裁平成24年7月9日判決は「どのような内容の調査を,いかなる方法により実施するかについては,公立中学校の設置者である地方公共団体の合理的な裁量に委ねられるというべきである。」として,調査内容については学校側の裁量に委ねられている旨明言しています。

 

とすれば,学校及び地方公共団体等の学校の設置者は,「生徒の自殺が学校生活に起因するのかどうかを解明可能な程度に適時に事実関係の調査を」することが求められてはいるものの,必ずしも保護者の満足する調査・報告ができなかったとしても,明らかに調査不足であるなどの事情がないかぎり,違法と判断されることはないのではないかと思われます。

※高松高裁平成24年12月20日判決は,生徒が自殺した事案について「全校生徒ないしそれに準ずる範囲の生徒に対して自殺の事実を知らせた上で,本件自殺につき,それらの生徒から聴き取り調査をするまでの調査義務があったということはできない。」として,当該事件に関しては,生徒らからの聴き取り調査をするまでは必要ないと判断しています。


 

【参照条文】いじめ防止対策推進法

第28条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2
 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
3
 第一項の規定により学校が調査を行う場合においては、当該学校の設置者は、同項の規定による調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。