例えば,A事業場において8時間の勤務をした後,B事業場で4時間の仕事をしたような場合,通算すると1日に12時間の労働をしたことになります。このような場合,B事業場での労働は,開始当初から労働基準法における1日8時間の制限を超えてしまっていることになります。
 

このような場合,B事業場の事業主は,残業代を支払う義務があるのでしょうか?
 

労働基準法38条1項は「労働時間は,事業場を異にする場合においても,労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定しています。つまり,事業主を異にする別の事業場で働いている場合であっても,1日8時間を超えて労働した場合には時間外割増賃金を請求できることになるのです。


で,結局,時間外割増賃金を負担するのは,上記のA事業場の事業主か,B事業場の事業主か,どちらなのでしょうか?
法律上は明確な規定がありません。

この点,厚生労働省基準局編『平成22年版 労働基準法』(労務行政刊 2011年)は,「通常は,当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべきであろう。」としている。

つまり,上記の例で言えば,AかBかいずれか後に労働者を雇い入れた事業主が,割増賃金の支払義務を負うことになります。時間的に後で雇用した事業主は,契約の締結に当たって,当該労働者が他の事業場で働いているかどうかを確認することができるからとのことです。

人を雇い入れるときは,その人が他の仕事を持っていないかを確認する必要があるのです。 

 

【条文の解説】

労働基準法32条2項,「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」として,1日8時間を超えて労働させることを制限するとともに,37条1項において,1日8時間を超えてした労働に対しては,1時間当たりの賃金に2割5部以上の金額を加えた割増賃金を支払うことを要求しています。