今回のセミナーは,1時間という時間的制約もあったため,かなり詰め込まれた内容になってしまいました。
かなり早口でお話ししたのですが,終わった後には何件か質問も頂き,関心の高さがうかがえました。 

内容としては,学校が訴えられるとしたら,まず出てくるであろう「安全配慮義務」についてお話をし,具体的な事例としていじめにより生徒が自死した事件を扱いました。
学校が安全配慮義務を追及されるのは,①結果に対する予見可能性があるにもかかわらず,②結果回避義務を怠った場合です。上記事例では,学校はいじめの事実について認識しており,被害生徒が精神的な疾患に罹患することについて予見し得たにもかかわらず,これを回避する義務を尽くさなかったとして,学校の責任を認めています。

上記に関連して,参加者からは,例えば学校において窃盗事件が生じており,生徒が犯人であると思われる場合に,学校側が責任を追及される場合があるのかという質問がありました。
生徒が窃盗行為を行うことは通常想定できませんので,原則として予見可能性は認められず,学校の責任が追及されるおそれはないと考えます。ただし,生徒が犯人であるという可能性があり,何らかの根拠を有しているにもかかわらず,生徒に対して「窃盗が生じているので貴重品は持ってこない」などの指導をしなかった場合には,責任を追及されるおそれがないとはいえません。学校は教育機関であって,捜査機関ではありませんので,犯人を捜し出すことは求められません。したがって,学校としては生徒に対して盗犯に備えるようにとの十分な指導をすべきと思われます。
参考となる裁判例に,掃除の時間に生徒が箒を別の生徒に向かって投げたことにより,その生徒が視力低下などの傷害をおったという事例で,学校の責任を認めたものがあります。この裁判例の特徴は,加害生徒が上記のような行為をしそうであるのに,学校として殊更注意しなかったというところに責任追及の根拠が求められているというものでしょうか。 

また,セミナーでは体罰の事例についても扱いました。
昭和30年代の高裁判決では,教育上の配慮があったとしても暴行に該当する行為が正当化されることはないと判断されており,長らくリーディングケースとされていたのですが,平成20年代になり,暴行に該当する行為であっても,行為の動機や生徒に与えるインパクト,行為の態様,生徒との関係性等に照らして,正当化される例が現れてきました。
しかし,正当化されるのは,例外的な場合と思われますので,基本的には体罰に該当する行為を行うことは許されないと思われます。

我々が生徒だったころよりも,感覚的にはいじめや体罰などに敏感な保護者が増えているようにも思います。学校側からの相談でも,校内で児童・生徒がいじめがあったとして,その保護者が調査・説明を求めてきたが,どのような対応をとればよいか,または,書面での回答を要求されたがどのように記載すべきかというものが多いです。
日頃から,学校が責任追及される根拠について学習し,いざというときに備えておきたいものです。