先日池袋で生じた事故で,主治医が被疑者の病歴等について捜査機関に通知したということがありました。

フェイスブックで友人の医師が,守秘義務の観点からはどうなるのか?との疑問を提示していたので,少し調べてみたところ,治療の目的で医師が救急患者から採尿したところ,警察官がこの尿を押収したという事件において,「医師が,必要な治療又は検査の過程で採取した患者の尿から違法な薬物の成分を検出した場合に,これを捜査機関に通報することは,正当行為として許容されるものであって,医師の守秘義務に違反しないというべきである。」と判断したものがありました(最高裁平成 17年7月19日第一小法廷決定)。

法曹関係者の方はご存じだと思いますが,いわゆる違法収集証拠排除法則により,被告人が,警察官が押収した尿を証拠として採用することは許されないと主張したところ, 最高裁は上記のように述べて,医師の守秘義務に違反しない,つまり違法な行為により採取されたものではないので,証拠として採用することができると判断したということですね。

最高裁は,「正当行為として許容されるものであって」と述べていますから,特段の条文を根拠にしているわけではなく,医師の守秘義務と捜査の必要性を比較衡量して,本件における捜査の必要性からすれば採尿及び通報した行為は医師の守秘義務に反するものではないと判断しているようです。
上記の判断からすれば,医師が医療行為を通じて犯罪行為を認識した場合,積極的に捜査機関に通報したとしても正当化されるのだから守秘義務に反することはないというようにも思えますが,実際には当該犯罪の重さであるとか,状況によって正当化されない場合がありうると思われます。

とすれば,医師は,基本的には守秘義務を優先して令状があることを前提に捜査機関への協力をすることとして,令状を要求する暇がない等の例外的な場合にのみ,令状なしで捜査機関に協力することを検討してもよいということになるのでしょうか。

難しい問題だと思います。