岩手県の中学1年生が,「いじめ」を原因として自死したとのニュースがあり,学校側(担任教師)の対応を問題視するニュースを多々拝見します。
この点について,そもそも「いじめ」が生じ,学校が責任を追及される場合というのはどのような場合なのかを整理しておきたいと思います。

1 「いじめ」とは?
『いじめ防止対策推進法』第2条1項では,「いじめ」とは,「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」と規定されています。 
わかりやすくいえば,心理的・物理的影響を与える行為をして,その相手方が心身の苦痛を感じれば,それは「いじめ」と評価されるということです。

本件についてみると,ニュースに記載されている事実関係しかわかりませんが,「生活記録ノート」に,「ずっと暴力」,「ずっと悪口」などと書かれており,当該生徒の言い分が事実であれば,上記の定義に当てはまることになり,「いじめ」と評価されることになります。
なお,「いじめ」か否かを判断するに足る情報がなかった場合には,学校側が免責される(責任を問われない)かというとそのようなことはなく,『いじめ対策推進法』第23条において,「学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは,速やかに,当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに,その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。」と規定されていますので,当該義務に反したものと評価されます。

また,後述の様に,学校及び学校設置者は,児童・生徒の心身の安全を保持する義務を有すると考えられていますので,その観点からも責任を問われるおそれがあります。

2  安全配慮(保持)義務違反?
「いじめ」について,学校が責任を負うのはどのような理由によるものなのでしょうか?

上述のように 「いじめ」とは,心理的・物理的影響を与える行為で,行為の相手方が心身の苦痛を感じるものという風に定義されます。

学校自身が「いじめ」を行っているわけではなく,「いじめ」を行っている児童・生徒がいるはずですので(ここでは「加害生徒」といいます。), その加害生徒が第一時的には責任を負うことになるはずです。
※例えば,殴って怪我をさせた場合であれば,傷害罪(刑法204条 )に該当するおそれがありますし,脅してお金を取った場合には恐喝罪(刑法249条)に該当するおそれがあります。実は無視したり,悪口をいったりするというよくありそうな場合が難しいのですが,被害生徒が精神的に苦痛を感じていることを知っているにもかかわらず,これを継続させることは,被害生徒の人格権に対する侵害であるとして,民事上の不法行為責任を追及されるおそれは多分にあるでしょう。

では,学校の責任をどう考えるかなのですが,一般的には学校は,児童・生徒との間に在校関係という特別な関係が存在しているので,これを根拠に児童・生徒の心身の安全を保持(配慮)する義務があると(裁判所において)判断されています。
※私立学校の場合は,学校(学校の設置者である学校法人)と児童・生徒 (又は保護者)との間で在学契約が締結されていると考えられることから,同契約を根拠に上記義務が認められるとしています。

学校側が「いじめ」が発生したことにより,責任追及されるのは,上記の安全保持(配慮)義務 を負っているにもかかわらず,この義務を果たさなかったときといえます。

3 どのような場合に安全保持(配慮)義務に反したといえるのか? 
なお,結果的にみて児童・生徒の生命・身体・精神の安全に危害が及んだという全ての場合に学校側の責任が認められるということではありません。
※例えば,学校側が全く気付くことができない恐ろしく巧妙な「いじめ」であり,学校側に落ち度がない場合に,学校及び教師の責任を追及することは不合理でしょう。

法律上は,①結果発生についての予見可能性があるにもかかわらず,②結果回避の措置を採らなかったとき, 責任を負うものとされます。
①「いじめが生じていることに気付くことができる状況で,その「いじめ」によって,児童・生徒の精神的・身体的・財産的安全が害されるということを予見し得た場合であって,②結果回避の措置を採れば,当該結果の発生を避けられたと評価できる場合に,学校が安全保持義務違反として,生じた損害を賠償する責任を負うことになるのです。

本件についていえば,①「生活記録ノート」において記載があり,その記載からすれば生徒が何らかの心身的な苦痛を感じていることは認識し得たはず,そしてそれが元で自死してしまうことは十分考えられた,②それにもかかわらず, 生徒の心身の苦痛を取り除く措置を何も行わなかった,という事実が認定された場合には,学校(学校設置者)が責任を負うことになるのです。
※あくまでニュースに掲載されている事実関係が裁判上認定された場合のことを述べていますので,結論としては異なる可能性は十分にあります。

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